養豚
経営

"基本を忠実に"をモットーに
経営を立て直した養豚経営

有限会社 石坂ファーム
代表者 石坂勇男 (いしざか いさお)


1.地域の概況


     
   三股町は宮崎県の南西部に広がる都城盆地の南東に位置し、霧島屋久国立公園の霧島山系を遠望するところに位置する。三股町の面積は11,001km2で東西に18km、南北に12.7 kmと細長い地形で、町の約70%は鰐塚山系に囲まれた平均標高250mの台地を有している。三股町は東部には鰐塚山系が広がり、おいしい水が自慢で、町民の自然環境への思いは深い。
町の人口は、24,461人で、農業中心の町であり、農業粗生産額の64%を占める畜産を主軸として、畜産と米、野菜、葉たばこ、茶などとの組み合わせた複合経営が多く行われている。畜産では、生産額、戸数ともに肉用牛が中心であるが、鶏、酪農、養豚等の専業も多く点在している。畜産農家戸数342戸の内訳は肉用牛繁殖264戸、肉用牛肥育33戸、酪農16戸、ブロイラー11戸、採卵鶏3戸、養豚15戸(うち4戸が一貫経営)となっている。
 

 

2.経営管理技術や特色ある取り組み

2−1.経営実績とそれを支える経営管理技術、特色ある取り組み内容とその成果等

2−1−1.指導開始以前の状況

     
   平成8年後継者が就農し、家族で養豚経営を支える体制ができた。生産面では、平成元年に導入した商系合成豚の生産性が低下するなど、経営に問題が生じていた。

 (平成9年の成績)
  母豚規模   108.9頭
  労働力       4.9人
  分娩回数   2.28回数
  ほ育開始頭数 23.1頭/母豚年間
  離乳頭数   18.5頭/母豚年間
  肉豚出荷   14.3頭/母豚年間
 


2−1−2.平成10年における経営診断の実施


     
  平成8年に後継者が就農すると、取引先をJAへと変更した。
平成10年、経営状況が厳しいため、JAは石坂養豚場の経営診断を畜産会に要請した。

平成9年度の実績に基づく畜産会の診断により、次の諸点が指摘された。
(1)母豚の飼養管理の不備により産子数にバラツキが発生し生産性の低下を招いた。
(2)授乳中の子豚の事故が多く、育成率が低い。
(3)子豚舎の舎内温度不足から子豚の発育にも影響をきたし、疾病等の事故が多く発生した。
(4)肥育豚の事故率が高く肉豚出荷頭数が少なかった。
 


2−1−3.改善策の提示と迅速な実行


     
  (1)種豚更新のための導入先変更
  • 種豚の繁殖成績を向上するために、えびの市のブリーダーからLW交雑種の種豚を導入した。
  • 種豚の導入と合わせ、共済獣医師の衛生指導を受けることとなり、予防衛生を重視した共済クリニックに加入した。

(2)子豚舎の整備

  • 子豚育成期間の事故率が高く、経営悪化の大きな原因とみられたため、ウインドレス式の子豚舎を整備した。

(3)肥育場の確保整備(JAからの賃借)

  • JA共同肥育場(都城市志和地)の一部をリースし、肥育部門を移転した。これにより、三股農場にゆとりができ、オールイン・ オールアウト方式の採用が可能となった。
  • 肥育場は、数戸の共同利用でリースを開始。現在は2戸の利用である。
  • 平成14年、肥育豚舎の屋根に断熱材を付設、豚房の両サイドに2重カーテンを設置した。
 


2−1−4.改善策による効果


     
  (1)種豚導入による改善効果

  • 母豚の一斉更新。その後も計画的な更新・淘汰ができる体制となり、生産体制が確立された。
  • 飼い易い母豚を導入したことで、農場の技術改善とも相まって、育成率・出荷率の大幅な向上など、農場全体の生産性が改善された。

    (ほ育期間中の育成率の推移)
     平成 9年度  80.1% 
     平成12年度  90.7%

(2)子豚舎整備の効果

  • 豚舎の設置に伴い離乳後の事故率が低減された。

(3)肥育場の賃借利用による改善効果

  • 大きな投資を要せず、肥育場がリースできたことにより、借入金の増加が抑制できた。
  • 事故頭数の減少及び肥育中の増体成績が向上した。
      
    (肥育期間中の育成率の推移)
     平成 9年度   77.3%
     平成12年度   82.2%

(4)飼養管理技術に関する改善への取り組みと効果

 ●繁殖農場

  • 母豚の導入により生産基盤も充実し、繁殖・出荷成績ともに安定してきた。疾病対策も自ら情報を収集し、環境整備にも取り組んだ。肥育豚の事故率が減少し、収益の向上が図られ経営的にも安定性を増した。

    (平成9〜12年度の成績推移)
            (単位:頭/母豚年間)

    項  目 H9 H11 H12
    ほ育開始頭数 23.1 27.1 23.6
    離乳頭数 18.5 20.7 21.4
    肉豚出荷頭数 14.3 17 17.6



 ●肥育農場

  • 肥育期間の事故率の低下、増体重の向上、飼料要求率の低下及び出荷豚の体重の斉一化が図られた。
 


2−1−5.現在の経営状況


     
  (1)JA、畜産会の指導を受け、平成11年から漸次、実行してきた改善策は
  • 種豚の更新
  • ウィンドレス子豚舎の設置
  • 肥育豚舎の借入、改善
  • 飼料給与技術の確立
  • 効果的な衛生対策の実施

    など広範囲に及んでいる。これによって、農場の生産性は年々、確実に向上している。

  • 育成率(ほ育開始/離乳)・・・(a)の推移。
    出荷率(離乳/出荷) ・・・(b) の推移。

    (単位%)
      H9 H11 H12 H14 H15
    (a) 80.1 76.4 90.7 91.1 88.4
    (b) 77.3 76.4 90.7 91.1 91.5


(2)平成14年に法人化。家族が構成員となって良好な人間関係を保ちながら、業務の分担や責任を明確化し、より近代的な経営体へと変革を遂げつつある。

 (平成15年の成績)
  母豚規模   163.2頭
  労働力       5.7人
  分娩回数   2.46回数
  ほ育開始頭数 29.1頭/母豚
  離乳頭数   25.7頭/母豚
  肉豚出荷   23.7頭/母豚

 


2−2.活動に取り組んだ動機、背景、経過やその取り組みを支えた外部からの支援等


     
 
  • 合成豚の世代が進むにつれて、繁殖成績にバラツキが大きくなっている。

  • ほ育開始頭数は正常な頭数であり、乳量が少ないか、子育てが上手くないことが推察される。農場の技術レベルが種豚の能力を十分に発揮させていない可能性もある。

  • 出荷頭数が少ないのは、子豚の事故率が高いことを示しており、施設の問題や肉豚管理技術の未熟さが推測される。

  • 取引先の変更は、若い後継者の仲間づくりを主な目的にしていたが、JAや畜産会など外部組織の客観的な指導を受け入れるきっかけにもなった。

  • 合成豚の系統間でも繁殖成績や子育て等の差があり、個体間に産子数のバラツキや育成率が低い。また離乳までの事故が多いなど、種豚の繁殖能力に疑問が持たれた。

  • 豚舎施設が老朽化し、保温が不十分なことから、子豚の下痢等の発生を招き離乳頭数の減少につながっている。

  • 離乳後の子豚育成でも、事故率が高く、発育もよくないことから、飼養環境をコンロールできる子豚舎の整備を検討すべきである。

  • 通常の豚価を想定すると、現状の繁殖・肥育成績では、今後、確実に経営悪化が見込まれ早急な技術改善が必要である。

  • 畜産会の養豚経営診断分析結果及び共済連の繁殖、事故、予防衛生等の総合的な検討の結果、種豚の導入先を変更することが良いと判断された。

  • 経営主は経営の現状に強い危機感をもち、種豚の更新が改善のキーポイントと判断、2年という短期間で100頭余りの更新を完了させた。

  • 導入先は共済連獣医師の紹介で、繁殖成績が良く、子育ての上手な種豚を所有する民間種豚場に決定した。

  • ウィンドレス式の豚舎で温度管理と換気を自動調節することで環境が改善され、離乳子豚の事故率の低下及び飼料の効率化が図られると判断し、中央畜産会の経営効率化リース事業で整備することにした。建設に先立って、畜産会の経営診断を基にシミュレーションを行い投資の妥当性を検討した。

  • 繁殖農場から肥育農場まで40分を要し、子豚の移動によるストレスは避けられないが、繁殖農場と肥育農場を分離することにより、重要疾病の防止とともに、なによりも投資額の低減できるメリットがあるのでJA肥育場を活用することは妥当と判断。

  • 共同利用という条件下では、衛生条件の維持が課題。

  • 種豚供給先からの支援の効果が大きく、種豚の特徴や適した飼養方法を知ることで、種豚の能力が十分に引き出せる条件ができた。

  • 種豚の特徴を踏まえた飼養管理体系ができ、事故率が徐々に低下した。

  • 年間を通じて安定した繁殖成績を得るために定期的な種豚導入が必要性である。

  • 年間離乳頭数が増加しており、種豚の子育て能力の高さが実証されている。

  • 肥育農場を繁殖農場と分離し、更に肥育農場の豚をオールイン・オールアウト方式で管理できる効果が大きいと思われる。

  • 肥育期間の事故率減少には、豚舎の環境改善(天井への断熱材付設、豚房サイドの2重カーテン設置)の効果も大きい。

  • 肥育豚は、発育がよく、ほぼ飼養管理マニュアルで想定した発育値に沿っており、出荷時期を容易に予測することがでるようになった。

  • 繁殖成績が好転した要因は、種豚の特徴を踏まえた上で、それに適した母豚の健康維持と飼料給与技術を確立できたこと、パソコン等による個体管理を徹底したこと。

  • 授乳中の母豚の健康状態をベストに保ち、産子数を向上させるために飼料給与回数を増すなどの個体管理を徹底している。(1日3〜4回給与)

  • 畜産会の経営診断など、外部からの客観的な分析・指導を機に、生産技術、経営管理両面の課題が抽出され、改善策が迅速に実行されたことにより、めざましく改善が図られた。

  • 種豚の更新は一気に進められた。新たな導入先は県内の優良種豚場で、強力な選抜が行われており、「一腹の離乳頭数10頭以上を保証」とPRしている。

  • 紹介した共済連獣医師は種豚場の衛生指導を行っており、導入と合わせて同獣医師の指導を受けることの効果も大きい。

  • ウィンドレス子豚舎の設置、肥育豚舎借入による繁殖との分離、断熱工事や2重カーテン設置による飼養環境の改善は事故率の低下、飼料効率の向上等のメリットが大きい。

  • JAから借入した肥育豚舎は2戸の共同利用となっており、衛生対策上の問題があり、疾病の多発にもつながっている。今後、共通の衛生対策の採用など検討が必要。

  • 平成10年、JAが畜産会に経営診断を依頼したのは、石坂養豚場への追加支援が困難と判断したためであるが、家族一体となった真摯な努力で着実に経営改善が進み、借入金も大巾に減少している。

  • 法人化に先だって、行政機関の働きかけで家族協定が締結され、担当業務の明示、給与の支払い、定休日の設定などを明確化がされており、法人化の取り組みがスムーズに進められた。
 



     
  <まとめ:経営実績>
  • 母豚163頭の一貫経営で、養豚総所得18,688千円、母豚1頭当たり年間所得114千円、所得率15.8%と極めて収益性の高い養豚経営である。

  • 定期的に母豚の淘汰、更新を行い、もと豚の導入が計画的に行われていることで良好な繁殖成績が持続され、生産基盤が安定することにつながっている。

  • 良好な繁殖成績を実現した技術的背景は、飼料給与技術の確立にある。
    母豚の飼料給与については、ボディコンディションの維持を重視し、妊娠期、授乳期などそれぞれのステージに応じたきめ細やかな飼料給与・管理が行われている。
    その結果は、年分娩回数2.46回、母豚当たりほ育開始頭数29.1頭、
    母豚当たり年間出荷頭数23.7頭という県内でもトップクラスの成績に表れている。

  • 肥育豚出荷時に、1頭毎に肉付きや背脂肪の状況を見ながら吟味し、出荷豚の体重を揃える努力を重ねており、上物率69.5%、枝肉重量74.2kgと県平均を上回り、枝肉単価も市場相場が低迷する中で、高い売上高となっている。

  • 平成14年に法人組織に移行しているが、現在の養豚経営が家族の円満な人間関係、全員の積極的な協力の成果であるが、そうした中ではあっても、業務の分担や責任を明確にしたり、経営内容や従事する全員の処遇をオープンにすることで、意識改革をすすめ、近代的な企業・職場にして行こうという家族の気持ちの表れである。
 


3.経営・生産の内容

(1)労働力の構成


     
 
区 分 続柄 年齢 農業従事日数 年間
総労働時間
労賃単価 備考
(作業分担等)
  うち畜産部門
構成員 本人 59 340 340 2,720 繁殖農場総括
56 340 340 2,476   繁殖農場・分娩
後継者 28 340 340 2,720   肥育農場
常 雇 長女 31 300 300 2,100 1,000 繁殖農場
男性 22 310 310 2,480 1,000 繁殖農場
労働力
合 計
5人 1,630日 1,630日 12,496時間    
 


(2)収入等の状況


     
 
平成15年6月〜平成16年5月
区 分 種 類
品目名
飼養頭数 販売量 販売額・収入額 収 入
構成比
農業生産部門収入 畜 産 肉 豚 母豚163頭一貫 3,865頭 116,153,938円 99%
廃 豚   56頭 1,106,991円 0.90%
堆肥販売     277,200円 0.10%
合 計     3,921頭 117,538,129円 100%
 


(3)土地所有と利用状況


     
 
区 分 実面積 備考

耕地 12a 貸付
50a 栗園
62a  
畜舎・運動場 69.4a 繁殖農場
その他 山 林 100a  
100a  
 


(4)家畜の飼養状況


     
 
単位:頭
品種・区分 LW
種雌豚
D
種雄豚
LW
繁殖候補豚
LWD
子豚
LWD
肥育豚
期 首 150 19 14 249 2,167
期 末 172 15 0 395 2,288
平 均 163.2 15.8 11.4 334 2,239
年間出荷
頭数
49 7     3,865

*年間哺育開始頭数:4,749頭

 


(5)施設等の所有・利用状況


     
   <所有物件>
種 類
面積
台数
取 得 所有
区分
構造資材
形式能力
備 考
(利用状況等)
金額(円)

分娩豚舎 225m2 H14.6 1,691,687 法人 軽量鉄筋  
分娩豚舎 250m2 H14.6 74,000 法人 木造スレート  
分娩豚舎(分娩改造)   H14.6 4,659,005 法人  
分娩豚舎(天井改造)   H14.6 41,313 法人  
分娩豚舎(屋根張)   H14.6 325,723 法人  
分娩豚舎(改造)   H15.12 1,190,563 法人  
種豚舎(ストール) 416m2 H14.6 339,502 法人  
種豚舎 420m2 H14.6 36,954 法人  
子豚舎 100m2 H14.6 693,841 法人  
子豚豚舎 200m2 H14.6 1,010,358 法人  
倉庫 564m2 H14.6 10,227 法人  
             

尿施設 1槽 H14.6 48,000 法人    
汚水槽 1槽 H14.6 80,000 法人    
受水槽(肥育) 1槽 H14.6 357,800 法人    
浄化槽一式 1台 H15.12 4,498,286 法人    
井戸 1台 H14.11 1,000,000 法人    
水道施設 1台 H14.6 3,500 法人    
防火用水施設 1槽 H14.6 7,500 法人    
             

高床式分娩ケージ 1台 H14.6 27,500 法人    
自動給餌機 1式 H14.10 2,766,750 法人    
換気扇 1台 H14.6 12,000 法人    
尿ポンプ 1台 H14.6 3,000 法人    
ポンプ1 1台 H14.6 10,000 法人    
ポンプ2 1式 H14.11 500,000 法人    
動コンVGW100 1台 H14.6 21,027 法人    
パソコン 1台 H14.6 19,380 法人    
スチーム洗浄機 1台 H14.6 219,594 法人    
             
  中古農機 1台 H14.6 28,071 法人    
磁気活性水 1台 H14.6 248,626 法人    
細霧装置一式 1台 H14.7 180,000 法人    
異常通報装置 1台 H15.10 136,290 法人    
動力噴霧機 1台 H16.3 144,375 法人    
堆肥選別機 1台 H14.6 84,630 法人    
ローダ(TCM) 1台 H15.5 924,000 法人    
トラック 1台 H14.6 51,500 法人    
乗用車1 1台 H14.11 192,651 法人    
乗用車2 1台 H14.6 290,071 法人    
軽トラック 1台 H14.6 131,242 法人    
軽乗用 1台 H14.4 747,000 法人    
             
 


4.経営・活動の推移



     
 
年次 作目構成 頭 数 経営および活動の推移
S48年 養豚 (肥育経営)
200〜300頭
  • 飼料販売会社勤務、その傍ら庄内地区に肥育豚舎を購入(400万円)、肥育経営開始(残飯養豚から配合飼料への転換期で、自ら実践農場設立)
S49年 (繁殖経営)
母豚30頭
  • 肥育経営より子豚生産へ転換。繁殖経営を開始し、子豚は市場出荷
  • 総合資金1,470万円を借入れ、豚舎の施設整備を行った。
  • 母豚10頭増頭し、40頭規模に拡大。
S53年 母豚40頭
  • 子豚の半数は自家肥育、残り半数は契約販売。
  • 経営主は会社を退職。養豚業に専念。
S58年 (一貫経営)
母豚120頭
  • 三股町の現在地に母豚80頭規模の繁殖農場を購入(種豚購入費と併せ、6,800万円の借入)し、2農場での運営を開始。
S59年 母豚100頭
  • 庄内農場に接して史跡発掘(隠れ念仏洞)。同農場を都城市が買収(買収価格、1,200万円)
  • 三股農場にあった素堀から汚泥流出。公害問題発生
    素堀解消のために、売却資金を活用して、肥育舎を発酵床豚舎に改築。併せて、種豚舎も増改築。
  • 繁殖成績改善のために、種豚を変更(商系の合成豚)
H1年
  • 後継者(息子)を種豚導入先の三重農場に派遣。飼養管理の基礎研修(6〜7年)。
H6年
  • 後継者就農。
H8年
  • 後継者の教育や仲間づくりを考えて、取引先を商系からJA系へ変更。
  • 畜産会の経営診断を受ける。子豚の育成率の低さが課題。
H10年 母豚137頭
  • JAの共同肥育場が操業廃止になり、都城市志和地の肥育場をリース借入。繁殖と肥育の分離を図り、オールイン・オールアウト方式とした。
  • 子豚事故低減を図るため、経営効率化リース事業を活用し、ウィンドレス子豚舎を建設。併せて、母豚50頭増頭し、150頭の一貫経営体制となる。
  • 種豚の変更。
    合成豚の繁殖成績が低下したので、えびの市のブリーダーからLW交雑種の種豚を導入。
H11年 母豚145頭
  • 種豚導入先ブリーダーと同じ共済獣医師の指導を受け、予防衛生を重視し共済クリニックに加入。 
  • 約150頭の種豚の更新が、11〜12の2年間で完了した。
  • 種豚舎、分娩舎の改築(天井に断熱材付設。ドリップ式散水施設設置)
H12年 母豚152頭
  • 有限会社 石坂ファームを設立し、法人化。
  • 肥育農場の改築(天井に断熱材付設。温度管理のために2重カーテンを設置)
H14年 母豚163頭
  • 畜産環境整備機構の1/2補助付きリース事業を活用し尿汚水浄化処理施設を整備。
H15年 母豚163頭  
 


5.家畜排せつ物処理・利用方法と環境保全対策


5−1.家畜排せつ物の処理方法


     
  (1)固液分離処理の状況(該当に○)
  ◎.全て分離(種豚舎)  ◎.混合処理(子豚舎、肥育豚舎)
 
(2)固形分の処理(堆肥化処理等)

  • 繁殖農場の分娩舎・種豚舎は固液分離方式。固形物は手かきで収集、堆肥舎へ搬送し堆肥化処理している。子豚舎は直受槽で固液分離、固形物は堆肥舎へ。

  • 堆肥舎へ搬送されたふん(固形物)は、水分調整を必要としなくても十分に発酵するくらいの水分量になっているためショベルローダーにて1週間に1回切返し堆積発酵させる。

  • 堆肥舎は、作業性を重視した効率の良い施設で、飼料に微生物資材を添加することでふんのみでもよく発酵し、堆肥の熟成には半年以上の期間をかけるため、熟成が進んでいる。

  • 堆肥は、約3割を20kgの袋詰めとし、JAを通じて地元の耕種農家及び有機野菜農家に販売し、利用者の評価が高い。約7割は、周辺耕種農家に無償譲渡している。

(3)液体(尿・汚水)の処理

  • 繁殖農場の所在地は、鰐塚県立自然公園の長田峡に接する景勝地にあり、環境保全には細心の配慮が必要である。当初施設にあった素堀りを解消した後、畑地還元を行ってきたが、尿処理を根本的に解決するため、リース事業を活用し、現在の汚水浄化施設を整備した。

  • 種豚舎及び子豚舎のふん尿は固液分離され、固形物を除去した後、液の浄化によってBODとSSの値を低減し、処理水は土壌蒸散方式で最終処理している。


(4)混合処理(肥育豚舎)

  • 肥育農場は、蹴り出し式のオガコ豚舎で、肥育豚が堆肥を蹴りだし、通路に落ちた堆肥をローダにて搬出する。

  • 堆肥舎へ搬送されたふん(固形物)は、熟成した堆肥を混合し容積重及び水分調整を行いショベルローダーにて7日に1回の間隔で切返し堆積発酵させる。

  • 熟成堆肥は、地元の耕種農家及び有機野菜農家へ無償譲渡している。
 


5−2.家畜排せつ物の利活用


     
  (1)固形分(繁殖農場)

内  容 割合(%) 品質等(堆肥化に要する期間等)
販売 32 180日〜360日  熟成堆肥
無償譲渡 68 耕種農家の利用作物毎(飼料作、里芋、人参等)に堆肥の熟成程度が異なる。


(2)固形分(肥育農場)

内  容 割合(%) 品質等(堆肥化に要する期間等)
販  売 0  
無償譲渡 100 耕種農家の利用作物毎(飼料作、里芋、人参等)に堆肥の熟成程度が異なる。
(180日〜360日 熟成堆肥 )


(3)液体分(繁殖農場)

内  容 割合(%) 浄化の程度等
嫌気性発酵 100 発酵処理後土壌蒸散処理


 

  
5−3.処理・利用のフロー図


     
   


5−4.評価と課題


     
  (1)処理・利活用に関する評価
  • 堆肥化処理について、微生物資材を飼料に添加し豚へ給与することで、ふんの状態が良いため堆肥化時の水分調整が不要となり、良好な発酵条件となっている。ショベルローダーを用いた切り返しもこまめに行われて、良質の堆肥が製造されている。

  • 堆肥を利用する耕種農家の利便性を考慮し、完熟堆肥は20sの袋詰め製品として、主としてJAを通じて供給される。また、耕種農家側の要望(完熟堆肥、又は素材としての未完熟堆肥)にも臨機応変に応えるなど、利用者の立場に沿った対応によってスムーズな活用が図られている。

  • 汚水処理について、町の中心を貫流する沖水川の上流、鰐塚山系の麓で町民の憩いの場所でもある長田峡に臨んでいる農場の立地に配慮して、固液分離後の尿・汚水は嫌気性発酵処理を行った後、土壌蒸散方式で処理をし、域外へは排出しないなど環境に十分な配慮が払われている。
  • 肥育豚舎は都城市志和地にあり、豚舎の周辺には耕種農家が多く堆肥の需要もある
    ので、無償譲渡による土地還元は合理的といえる。

(2)課 題

 堆肥化処理について

  • 当地域は、国内でも有数の畜産地帯であり、家畜の飼養密度は高い。「家畜排せつ物処理法」の本格施行を間近にして、堆肥化施設の整備が急速に進められており、堆肥の供給過剰も危惧されることから、より高品質の堆肥化によって利用を伸ばすことや広域流通に対応できる製品形状等の工夫が求められる。

 汚水処理について

  • 尿汚水処理は、嫌気性処理と土壌蒸散方式の組み合わせで計画通りの処理が行われているが、土壌蒸散装置内の土壌層は目詰まりが予想されるため、定期的な点検と土層の交換等が必要となる。
 


5−5.畜舎周辺の環境美化に関する取り組み


     
    農場は鰐塚県立自然公園の周辺部、町民の憩いの地、長田峡に臨んで立地し、豊かな自然に囲まれている。農場には豊かな流水が引きこまれて、用水として利用されるなど、周辺住民の理解があってのことではあるが、恵まれた環境である。

  こうした環境を大切にし、周辺地域の快適な生活環境を守っていくことは、日頃から最も気を使っていることである。四季折々の草花植え付けや木々の植栽など農場内外の美化に努めている。
また、飼料搬入や出荷で車の通行量が多いこともあり、集落道の補修・舗装や側溝整理などを行っており、地域住民からも評価されている。
 


6.後継者確保・人材育成等と経営の継続性に関する取り組み



     
 
  • 平成6年、後継者が就農を希望したことから、当時の種豚導入先であった三重県の種豚場へ派遣し、平成7年まで2年間にわたって養豚の基本的な知識、技術を身につけるための研修を行った。

  • 後継者が就農した後、JA等の経営支援対策や後継者育成の取り組みを考慮して取引を系統に変更し、県経済連やJA等の様々な支援対策を活用したり、JA青年部、肉 豚部会活動や研修等を通じて、同じ世代の養豚家との交流にも積極的に参加している。
 


7.地域農業や地域社会との協調・融和についての活動内容



     
  (1)SAP会議のリーダーとして
 SAP(サップ:農業繁栄のための学修活動)は、約40年の歴史を持ち、宮崎県における農業青年運動の中核であるが、後継者はこの活動に積極的に参加し、リーダー的な役割を果たしている。都城・北諸SAPは会員72名、6学修集団をもつ県下有数の組織であるが、14年には副地区長、15年には地区長、県SAP連合理事を務めるなど地域の各学修グループの活動をリードし、地域、県の農業青  年運動に積極的に取り組んでいる。

(2)JA都城肉豚部会の役員を務めながら次の様な活動を行っている。

  • 生産性向上のための技術検討会および研修会(12回/年)
    後継者(息子)は、生産性の向上が図るためにN−5200会(パソコンを用いた技術研究会)に参加し、毎月の生産技術データを全農ソフト商品名ピックスに入力し、会員は各人が個々の分析結果を持ち寄り、月ごとの繁殖成績から出荷成績までオープンにし、お互い刺激を受けながら技術の研鑽に努めている。

  • 種豚導入先や飼料・薬品メーカーと鹿児島と両県の養豚農家5戸を含めて、無薬養豚などの研究会も参加している。

(3)農業塾参加など地域交流の取り組み
 三股町の主催で、農業後継者が中心となって地域住民や小中学生との交流を通して地域農業の現状や多様な役割を理解してもらう「農業塾」(隔月開催)に参加し、中心メンバーとして活動している。

  • 中学生の職場体験学習として農場訪問の受け入れ。
  • 町内で取れる農産物PR活動。
  • 町内の異業種交流会への参画。
 


8.今後の目指す方向性と課題



     
  (1)生産性の向上で、高収益性の経営を確立
 当面、増頭による規模拡大はせず、生産性の一層の向上によって収益性の高い経営の確立を目指す。
 生産性向上の具体的目標は 
  • 母豚1頭当たり出荷頭数   27頭
    平成14、15年の実績は24.0頭、23.7頭。時期的には26頭の実績も得られているので、適正な母豚管理によって達成可能と思う。

  •  〃  〃  枝肉出荷重量  2,000kg
    基本的には、出荷頭数に左右されるが、出荷する肥育豚の選定など出荷時のきめ細やかな対策を併せ実施することで達成できると思う。

(2)規模拡大
 後継者も就農後7年を経過し、生産技術的にも経営管理の面でも経験を積んでおり、もう1段の規模拡大を考慮している。
 具体的には、JAから借入している肥育豚舎に3棟の空きが生じているので、これを新たに借入して、これに見合う種豚約100頭の増頭を検討する。
 なお、肥育豚場は現在2戸で利用しており、疾病発生率が高いなど防疫上の課題もあるので、共同で防疫体制の確立を進めたい。

(3)JA養豚部会の充実
 現在、経営主が養豚部会の役員も務め、活動の中心でもあるので部会活動の一層の充実を図るため役割を果たしたい。

  • 環境問題は養豚農家の共通の課題であり、部会全体で良質堆肥の製造、耕種農家での利用を推進する体制の強化を図る。

  • 契約取引など、肉豚の販売方法の改善・強化を部会活動として取りむ。

  • 後継者育成が重要であり、研修生の受け入れなど体制づくりを進める。
 

 

9.事例の特徴や活動を示す写真



     
   
 
1.繁殖農場
  2.右の豚舎:離乳舎(ウインドレス舎)
  左の豚舎:種豚舎

 
3.種豚舎・計量付き自動給餌器
 
  4.種雌豚・ストール舎(妊娠豚)
 
5.授乳母豚
データを見ながら給餌回数3〜4回
  6.分娩房の子豚の状態
生まれた翌日:朝・夕初乳を2回確実に飲ませる。

 



     
   
 
7.離乳舎(ウインドレス舎豚舎)・奥換気扇
  8.肥育農場
(豚舎両サイド2重巻き上げカーテン)
 
 
9.肥育舎改造(天井設置)・豚房洗浄後

  10.尿汚水処理(嫌気性と土壌蒸散方式)
 
 

 

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